第78章 監視下
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「・・・・・・」
数時間は経っただろうか。
彼と同じベッドに並んでいるのに、お互い背を向けて転がるのは初めてのことだった。
痛みと落ち着かない感情のせいで眠ることはできず、ただ彼が眠りに落ちるのを待った。
流石にこれだけ待てば、彼も眠っているだろう。
あれからピクリとも動かず、落ち着いた呼吸だけを繰り返す零を横目に、ゆっくり音を立てないようにベッドから降りては、救急箱をしまった押し入れへと向かって。
泥棒をしているような感覚に陥りながらも、そこから救急箱を取り出し、お風呂場へと足を進めた。
「痛た・・・」
壁に背をつけ、そのままなるべく足に力を入れないように座り込んで。
当てていたハンカチは血で染まり、念の為に敷いていたタオルまで、それが移り始めていた。
明日は病院に行かなくては。
その際の言い訳を薄ら考えながら救急箱を開けると、消毒液を手に取って。
肩の傷も、この間観覧車で受けた傷も、ようやく治ってきたと思っていたのに。
次から次へと怪我をしてしまう自分に嫌気がさす。
・・・したくてした訳では無いが。
「・・・よし」
消毒を済ませ、あとはガーゼを当てて包帯を巻くだけ。
そう考えながらそれらを取り出し、手を動かそうとした直後だった。
「それだけでは不十分だ」
「・・・!!」
考え事と手当てのことで注意が逸れ、彼がそこに居たことに全く気が付かなかった。
驚いて声のした方を向くと、ゆっくりお風呂場の扉が開かれ、零が私を見下ろして。
「ど、どうし・・・」
「銃創は蓋をした方が良い」
座る私の傍に来ると隣に膝をつき、足の傷を見るなりそう言うと、救急箱から別の軟膏のような物を取り出した。
「応急処置にしかならないから、明日は朝一番で病院に行くこと。いいな?」
手当ての最後、少しキツめに包帯を巻かれると、そう命令を受けて。
「はい・・・」
無意識に、敬語で返事をした。