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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第9章 仮の姿




どこから向かっても彼女の家まではいつもあっという間で。

「行動の報告は必ずお願いします」
「・・・分かりました」

そう言って車を降り一礼される。それに笑顔だけ向けて車で走り去って。少しだけ走ると適当な場所で車を停めた。

取り出したのは先程彼女から取り上げたスマホ。一通り触って、改造内容を把握する。どうやら本当に位置情報と盗聴だけができるようだった。

ポルシェに仕掛けた発信機はすでに電池が切れているようで。それに少しだけ安堵した。

こういった物に特別強い訳では無いが、追跡アプリをそれへインストールした。バレる可能性は大いにある。恐らく一度はバレているんだろうし。

それでも、そうでもしないと不安で潰れてしまいそうで。
彼女にとっての良策とは言えないと分かってはいる。それでも僕はこういうやり方しか知らないから。

僕が彼女にどう思われたって構わない。
彼女を守ることが僕の今の使命だと感じているから。

インストールし終わり、彼女の家へと向かう。
本当はスマホをポストに入れて、顔を合わせずすぐに
帰るつもりだった。

彼女が知らない男に支えられているのを目撃するまでは。

それがギリギリ目視できる場所で車を停めた。この何とも言えない胸のざわつき。
車を降りて彼女の元へ駆け寄った。

「ひなたさん・・・!?」

必死に演じた。
本当の自分を押し殺して、安室透を。

今すぐ目の前の男を剥がして彼女を連れ去りたかった。でもそれは安室透の行動ではない。動作一つ一つを自分に言い聞かせながら焦る表情を作る。

彼女が少しだけ焦ったように、支えられている男に視線を向けた。それはとても初対面の人に向けるものだとは思えなくて。

彼女を支える男の腕も、それを掴む彼女の手も、彼女がこういう時にまたそこにいられなかった自分にも苛立って。

ひなたさんを支える男は僕をじっと見つめた。

「・・・こちらの方は?」

苛立ちを抑えて、心配という気持ちを全面に押し出しながら二人に問いかける。

「ただの通りすがりの者ですよ。彼女が具合が悪そうにここへ座り込んでいたので、家まで送ろうとしていたところです」
「・・・その割には仲が良さそうですね」

ダメだ、冷静になれ。
言い聞かせても安室透という人物が、次に発するべき言葉が思いつかない。


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