第78章 監視下
「ベルモットと会っていたんですね?」
彼の話というのが何だったのか知らないが・・・勝手にその話だと結び付けてしまっていた。
そう思うと、ある意味カマを掛けられていたのかもしれない。
「・・・いけませんか?」
「ええ、良くはありませんね」
運転席の窓から顔を出していただけだったのに。
そのドアを開けて車から体を出すと、ゆっくりと距離を詰められていった。
「ちょ・・・っ、何するんですか・・・っ」
抱えられ、車に乗せられるまではあっという間だった。
それは半ば誘拐とも言えるようで。
抵抗する間も体力も無いままシートベルトをつけられると、車はどこかへと発車されてしまった。
「言ったでしょう。手当てをさせてくださいと」
「だからそれはベルモットに・・・!」
車を停めて欲しいと彼の服を掴んでは、その横顔に目を向けた。
「・・・っ・・・」
でも、その時視界に入った彼の目が、どこか怖くて。
それ以上の言葉が出なくなってしまった。
何か言って欲しい。
何でも良いから。
そんな思いも虚しく、彼からもそれ以上の言葉が出ることは無かった。
ーーー
車を走らせたのは十数分。
停められたのは、またしても見覚えのあり過ぎる場所で。
それは彼の家ではないのに、今も彼が居座っている場所。
「失礼します」
一応断りを入れてから運ばれる。
そして、いつもならそれに抵抗をする。
けれど、今日はそれができなくて。
しなかった、というのも間違いではないけれど。
運ばれた方が事が早く終わると思ったのもある。
けれど、抵抗の言葉を口にするのが怖かった、という理由が一番かもしれない。
彼の目を見るのも怖い。
何故こんなにも、そう感じるのか分からないが・・・分からないからこそ、尚更に怖くて。
「ここで待っていてください」
座らされたのは、ここに居た頃いつも彼と過ごしていた部屋のソファーで。
その手付きは優しく丁寧なのに対し、口調はどこか冷たくも感じた。