第77章 知る由
(※以下、一部流血表現が有ります)
掠っただけ、といえば軽傷に聞こえるが、抉るように太ももを掠ったそれは、想像以上の出血と痛みを伴った。
「・・・・・・っ」
「良い目になったじゃねぇか」
半ば無意識にジンを睨むように見上げると、彼は不気味な笑顔を浮かべて。
「ジン、独断で殺さないでくれる」
「この猫を始末すれば、あの男も静かになるだろうよ」
・・・静かになる前に、どうせバーボンも殺すつもりなんだろう。
それを裏付けるように、どこからか伝わってくる。
バーボンに対する強い嫌悪と、殺意が。
「私への迷惑も考えてくれないかしら」
「くどいぞ、ベルモット」
怒りの増した口調でベルモットのいる方へ鋭い眼差しを向けると、再び銃口を私へと向けた。
「猫一匹殺されたところで喚くなら、それこそ始末してしまえばいい」
・・・この男が言いそうなことだ。
ただ、彼の言う事は組織的には正しいのだろう。
理解しようとは思わないが。
「その子、案外優秀なんだから生かしておいてくれるかしら。後々、私の駒としても使いたいから」
ベルモットの言葉に、思わず彼女の方へと振り向いた。
その言葉は、この場を逃れる為の物なのか・・・それとも、本気の言葉なのか。
「かなり手先が器用みたいよ、その子猫ちゃん」
「!」
まさか、盗聴器や発信機作りのことを言っているんだろうか。
それを知っているということは、バーボンがその事をベルモットに伝えたか、彼女が私を調べ上げたか。
もし前者なら、そういう面でもバーボンは、私の存在理由をベルモットに示していたんだ。
だとすればさっきのベルモットの言葉は・・・半ば本気かもしれない。
「それに、あの男からは本当に何も聞かされていないみたい。そもそも、コードネームも与えられていない男に、我々の情報が漏れるとは思えないわ」
・・・兄の事か。
彼女がどこまで本当の言葉として話しているのか分からないが、何も聞かされていないのは半分事実で。