第77章 知る由
「ちょっと・・・それで違ったらどうするのよ」
「それこそ、俺の知ったことか」
キールの時もそうだったが、ベルモットは無意味な殺しをしたくない主義なんだろうか。
背後から聞こえる声だけは冷静に整理できるのに、それ以外の事は目の前の眼光のせいで何もできなかった。
「おい、女」
「・・・っ!」
彼の左手に握られている銃が、カチャッと音を立てて。
突然呼ばれたことに対して体は過剰に反応し、震わせたくはなかったのに、肩を僅かに動かしてしまった。
「バーボンのこと、早く吐いてしまえば苦しまずにあの世へ連れて行ってやるよ」
吐いても吐かなくても、殺されるんじゃないか。
だったら吐くなんて選択肢、誰も取るわけが無い。
・・・きっと、殺されたノックの人達も。
「何も吐くことはありません」
声だけは震えないように。
強く発したつもりだった。
本当にそう発せていたかどうかは、自分では分からなくて。
「・・・そうか」
ベルモットの口添えのおかげか、予想外にもジンの口から出たのは納得の言葉で。
それと共に、額に当てられていた銃口はゆっくり下げられ、完全に額から狙いを外された。
下ろされていく銃に目を向けると、想像以上に長い銃口の先に気付いて。
・・・サイレンサー。
キールとバーボンを捕らえていた時は付けていなかったのに。
何故か今回は山奥でも用心深いのか、それを付けている事を目視した。
苦しかった呼吸が僅かだが楽になった瞬間、その時は静かに訪れた。
「・・・ッ・・・!!」
「ジン!」
小さな発光と共に右足の太ももに熱い感覚を受けた瞬間、膝から崩れ落ちるようにその場に倒れた。
それと同時に聞こえてきたのは、ベルモットの叫ぶような声で。
「・・・・・・っ」
痛みがあった場所を手で押さえると、いつだか肩に同じ衝撃を受けた時とほぼ似たような感覚を感じた。