第77章 知る由
「それで、のこのこと帰ってきたというの?」
「彼の為に生きたいと思ってしまったんですから、仕方がありません」
ただ木の間を通り抜けるだけ。
方向感覚なんてものは、既に無い。
そんな中、ベルモットからの質問に淡々と答えた。
「あの時と随分、貴女に対する執着心が違うから私も興味が出たわ」
言い終わるや否や、突然車は山の中で停車して。
ベルモットは徐ろに、人差し指で私の頬を上から下へ這うように滑らせると、顎を下から僅かに持ち上げた。
「貴女にね」
「私は興味ありません」
できれば、関わってほしくなかった。
それは零が公安警察である以上、避けられない事だったかもしれないが。
「かなり雰囲気が変わったのね。あの時は子猫ちゃんの様に怯えていたのに」
「ええ、まあ」
彼がこの辺りを、ベルモットにどう説明しているか分からない。
説明していないことは、無いだろうし。
分からない事は適当に濁して、彼の迷惑にならないようにしないといけない。
私が生きて帰れる保証は無いのだから。
「安室透とも仲良くしているようだけど・・・どうしてかしら?」
「バーボンの駒として動いているんですから、当然じゃないですか」
何故、そこまで私を気にするのか。
彼女がコナンくんに肩入れする理由を、私が知りたいのと同じ様な感覚なんだろうか。
「そこよ。何故、組織の人間と知った上で駒として動いているのか。貴女が身内の様に慕っていた人間が死んでいった所よ」
一応、兄が死んだことはベルモットも知っているのか。
まあ、組織から姿を消せば、理由はどうあれ待つのはそういう末路だけだろう。
「さっきも言いましたけど、彼の為に生きたいと思ったからです。それ以外の理由なんてありません。それに、兄は関係無いでしょう?」
「そうでもないかも、しれないわよ?」
そう言った彼女は、顎を持ち上げていた指を首筋に這わせるように下ろし、そのまま手を引いた。
まさか。
兄と零が知り合いだったことに・・・ノックだということに勘づいているのでは。