第77章 知る由
その後、特に会話も無いまま、アイマスクをつけさせられて長い時間走った。
視界を塞がれていたおかげで正確な時間は分からないが、恐らく一時間近くは走っていた感覚があって。
「もう外していいわ」
まだ車が走っている最中だったが、ベルモットにそう声を掛けられ、ゆっくりとつけていたアイマスクを外した。
僅かな光だったが、隙間から入ったそれに眉を顰めては、ゆっくりと視界を慣らしていった。
「・・・バーボンはここに私が居ること、知りませんよね?」
段々と慣れてきた視界を動かすと、想像以上に山奥へと向かっている事に気が付いて。
静かに質問から切り出すと、ベルモットは綺麗に口紅がひかれた口角を吊り上げながら、ゆっくりそれを動かした。
「そんなに気になるかしら?」
「ええ、まあ。心配はしないでしょうけど」
・・・自分で言っておいて、悲しくなった。
そんな事は無いと・・・思ってはいるけど。
でも、彼がここに来てはいけない気がする。
もしタイミングが悪ければ、彼は遺体を見ることになるかもしれないし。
「もし、私がジンに殺されても・・・バーボンには黙ってて頂けますか」
「随分とお互いにぬるい事をするのね」
確かに、組織としてはぬるいだろう、な。
「もしかして、組織絡みとは別に繋がっているのかしら?」
「・・・何もありませんよ」
動揺するな。
何も、無い。
今の私は、ただのバーボンの女だ。
彼の愛人で、玩具で、ただの道具だ。
「あの時も貴女を逃がしている。そのせいで、貴女もバーボンも、ジンから余計に目をつけられているのよ?」
疑われたって仕方が無い。
それくらいの事はしている。
「駒を失うのが嫌だったんじゃないですか?体の相性は良いみたいですし。そもそも、バーボンが逃がしたのではなくて、私が逃げたんです」
零は・・・組織やベルモットに、私をどう説明していたんだろう。
今になって、詳しく聞いておけば良かったと後悔しながら、聞いても教えてはくれなかっただろうなと、もう一度心の中でため息を吐いた。