第77章 知る由
「・・・あれ?」
補充しようとペーパーホルダーに手をかけるが、やはりそこには、まだ十分過ぎるペーパーが備え付けられていた。
「すみません、ペーパーあるみた・・・・・・」
振り返りながら彼女に言いかけた時、眼前にはとある物が向けられていた。
凡そ、日本で一般人が目にする機会は少ないが、何故か私は最近よく見る物。
殺傷能力は高く、急所を狙えば一発。
その黒光りする銃を、何故か背後に立っていた彼女が構えていて。
急所に向けられた銃口は、私に恐怖を与えるのには十分だった。
「立花・・・さん・・・?」
「流石にここへは、カメラを仕掛けていないようね」
カメラ・・・監視カメラのことだろうか。
まだ降谷零の存在を知らない頃、私を監視するものとして付けられていた物。
それは今でも、事務所の監視カメラとして機能はさせている。
ただ、何故それを気にしているのかが分からなくて。
「ジンに言われてるの。悪く思わないで」
「!!」
先程までとは全く違う声。
そして彼女から出た、ジンという名前。
そしてこの声には、嫌でも聞き覚えがあった。
「ベルモット・・・」
「あら、覚えててくれたのね」
姿こそ依頼者のままだが、声はベルモットそのものだ。
でも・・・何故ここが。
「貴女がここに出入りしていることは、もっと前から把握しているわ。まあ、今のところ私しか知らないから安心して」
・・・そんな言葉、信じられる訳が無い。
寧ろ、安心には程遠い状況過ぎる。
「・・・ここで、消すんですか」
「そんな事すれば、バーボンから何されるか分からないから嫌よ」
では、その銃口は何なのか。
ただ私を大人しくさせるだけなら、もう良いのではないかと、心の中だけで訴えた。
「黙って着いて来てくれるかしら?ジンが待ってるわ」
「・・・・・・っ」
ついに、あの男に会うんだ。
いずれはこんな日が来るかもしれないとは思っていたが・・・その日は想像以上に早く、突然に訪れた。