第76章 聞いて※
「・・・・・・」
一つ一つ、ゆっくりと、確実に。
ボタンを外していく度に、彼がこんな服を着ているのは珍しいな、と感じながら。
いつもはボタンなんて無い、薄手のシャツをよく着ているのに、今日は何故か寝間着のような服だ。
僅かではあるが、この手間が少し焦らされているよう・・・に、も・・・。
・・・いや。
もしかして。
「・・・!」
どうやら、いつもの嫌な予感は的中したようで。
閉じるように言っていた彼の瞼はいつの間にか開き、ボタンを外す私を楽しそうに口角を上げながら見守っていた。
そんな彼と目が合うと、ニコッとその笑みを深められて。
・・・この服は、最初からこのつもりだったんだ。
こういう状況になったのは偶然かもしれないが、それでもこの行為は彼によって必然的に起こされたもの。
私を焦らしながら、一つずつボタンを外させる。
たったこれだけの事なのに、普段と違うというだけで体は欲を倍増させた。
彼の術中にまんまとハマってしまっていた。
「・・・閉じててって言ったのに」
「可愛いひなたの姿を、見逃す訳にはいかないだろ」
少し・・・心配して損した気分だ。
でも、これも彼なりの気遣いかもしれない。
彼は自分の弱さを見せないから。
こういう部分で、隠しているつもりかもしれない。
・・・単純に、楽しんでいる可能性も無いわけでは無いが。
「こっち、向いて」
不貞腐れた雰囲気を出しつつボタンを全て外し終わると、彼がそう指示をして。
どうしたのか、と視線で尋ねるついでにその指示に黙って従った。
「ンぅ、っんん・・・う・・・ッ!!」
視線が合うとほぼ同時。
唇が深く塞がれたと思うと、再び彼の片手が膨らみの蕾を刺激した。
もう片方の手は後頭部を抑え、それがキスをより深くさせて。
溺れる。
それが今の私にピタリと当てはまる、そんな状況だった。