第75章 貴方が
「・・・単刀直入に聞きます」
濁しても、揺さぶっても、彼は適当にあしらうだけだから。
真っ向勝負をしなければ、それは平行線を辿る。
だから。
「・・・沖矢さん、本当は赤井秀一・・・ですよね?」
ただ、純粋に。
聞きたい事だけを聞く。
「だったら、どうしますか?」
「・・・どうもしません。ただ、確認をしたいだけです」
そう、何もしない。
事実だとすれば、それを零に言うことも無い。
・・・それは、コナンくんとの約束だから。
「でも貴女は、赤井秀一では無いと言っても信じないのでしょう?」
「沖矢さんが頑なに否定をするなら、そういう事にしておきますよ」
そう、もうその考えが曲がる事はほぼ無い。
彼が赤井秀一だという事は、半分確証を得ているから。
・・・ただ、立証ができなくて。
「いつからそうだと?」
違和感は何度もあった。
でも、何となくそう確信したのは、この一週間での出来事。
その引き金となったのは。
「赤井さん、二度目だと言っていたので」
「・・・ほう」
零が、ジン達にノックだと疑われて廃倉庫に拘束された時。
そこに着いて彼の忠告を受けた後、彼の顔が近付いて。
その時それを拒んで彼の口を、この手で塞いだ。
それを赤井秀一は、二度目だと言った。
「確かに、あの行動をとったのは二度目でした。・・・でも、一度目の相手は赤井さんじゃない。沖矢さんでした」
そこまで話すと、目の前に座る彼の口角が少し上がったように感じて。
僅かな悪寒を感じながらも、彼だけを見つめたまま、話を続けた。
「本当は、私に気付かせようとしていたんじゃないですか」
「もし仮にそうだとして・・・何故ですか?」
そんなの。
「私が知りたいです」
その答えを知りに来たと言っても過言では無い。
この一週間、零からの言葉を考える内に彼の正体を深く考えるようになってしまった。
今まであった事や行動を思い返す度に、彼が赤井秀一だと証明されているようで。
同時に、そうでなければ良かったのに、という思いも強くなっていて。