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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第75章 貴方が




「・・・ありがとう」

涙が落ち着いたのを見計らって、零はココアの入ったマグカップを手渡してくれた。

事務所のようにペアの物では無いが、きっと零がいつも使っているものなんだと思うと、それだけで少し鼓動が早くなった。

「病室にも来たんだろう」
「・・・え?」

一口、ココアを口に運んだ直後、彼は呟くようにそう尋ねてきて。

「あの男、僕が来る前に来たんじゃないのか」
「会ったの・・・?」

赤井さんもあの時、零の存在には気がついていたみたいだけれど、会わないように早めに部屋を出たはずだが。

「ひなたは動けないのに、シーツに誰かが座った跡があった。あんな場所に腰掛けるような人間、赤井しかいないだろう」

・・・流石、というべきだろうか。

そして、結局お互いよく見知っているような口振りをするのは無意識なのか。

「・・・ごめんなさい」
「どうして謝るんだ」

どうしてだろう。

「な、何となく・・・」

あれを接触してきたとは言えないと思ったし、触れられたとはいえ、何かをされた訳でも無い。

赤井さんも考慮をしていたし、わざわざ報告するのも違うと思ったから黙っていたのに。

自ら謝るということは、後ろめたい事があると言っているような物だ。

「・・・怒らないの?」
「何かされた訳では無いんだろう」

何をもってそう思ったのだろうか。

された、というのは確かに正しくない。
でも、されそうになった事は事実で。

だがそれをわざわざ言うのも、火に油を注ぐだけのような気がする。

「・・・されたのか?」
「う、ううん・・・!されてない・・・!」

沈黙は肯定を生む。
ただ、時によってそれは反対となる事もある。

そこで慌てて反論すれば、怪しさは倍増までしてしまう。

分かってはいても、その手順を丁寧に一つずつ踏んでしまう自分は、相当学習能力が無く、愚か者だ。




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