第1章 出会い
「一週間前にこれを、兄の友人と名乗る方から受け取りました」
手紙にはこう綴っていた。
『この手紙を読んでいるということは俺はもうこの世にいないということだ。だが決して俺の死へは関わるな。何があってもだ。』
走り書きのような字で雑に書かれた短い手紙。正直なところ、最初は兄からのイタズラなんだと思った。
手紙を持ってきた彼の友人が、涙を浮かべながら帰る姿を見るまでは。
その友人に何度もどうして亡くなったのか聞いたが、自分も知らない、としか答えは返ってこなかった。
「どうして兄はこの世からいなくなったのか・・・ただその理由が知りたいんです」
私に家族はおらず、唯一彼だけが兄のような存在で、かけがえのない家族だった。
その彼を失った今、どう生きて良いのか分からない。せめて彼の死についてだけは、知っておきたい。そう思い、彼が拒んだ警察ではなく探偵に頼むことにした。
「わかりました、早速明日から僕も調査してみます」
「よろしくお願いします」
祈るように深く頭を下げた。
結局その日は毛利探偵事務所に戻ることはなく、そのまま家路について。
心無しか、気分が軽い。
誰かに話せるだけで良かったのかもしれない。そう感じながら、ベッドへ倒れ込んで。
着替えなきゃ・・・と思いつつも、連日の睡眠不足もあり、私は簡単に意識を手放してしまった。
目を覚ましたのは明け方四時頃。
確実に寝過ぎてしまったが、こんなに深く眠りにつけたのは久しぶりで。
まだだるさの残る身体を起こし、とりあえずシャワーを浴びた。
コナンくんも安室さんも、何だか不思議な人だったな・・・と昨日のことを思い出しながら。
シャワーを浴び終わり、部屋に戻って。視線を向けるのは一枚の写真。
兄が中学へ上がる頃に一緒に撮ったものだ。小さい頃は沢山写真を撮ったのに、大人になってからは恥ずかしいからと何度も断られた。おかげで最近の写真は一枚もない。
そこは悔しい部分でもあった。
「会いたい、な・・・」
叶うはずのない思い。また目頭が熱くなる。
兄と音信不通になってからは仕事が手につかなくなり、辞めた。貯金は一応していたので、もう暫く生活は大丈夫そうだったが、そろそろ仕事も探さないといけない。
「バイトでも・・・始めようかなあ」
そうぼんやり考えながら、ゆっくりと出掛ける準備を始めた。