第1章 出会い
「でも、ポルシェに乗っている人は怖い人が多いから絶対に近づくなと言われていました」
そういえば、と思い出すように伝えた。
「特に、真っ黒なポルシェ356Aに乗っているやつは危ないやつが多いから、近付かずすぐに連絡しろ・・・というのは、しつこく言われていました」
ミステリー好きな彼だから半分冗談もあったと思いますけど、と伝えたが、途端にコナン君と安室さんはそれぞれ雰囲気の違う強張った表情を見せた。
何かまずいことを言ってしまっただろうか。
少しの沈黙の間、二人の顔を交互に見るしかできなくて。その沈黙を先に破ったのは安室さんだった。
「如月さん。良ければこの依頼、僕に任せてくれませんか?毛利先生には僕から話を通しておきますので」
「・・・安室さんへ?」
「依頼料は、弟子として・・・ということで結構ですよ」
それは助かるけど。
問題は正直そこではなくて。
「僕も安室さんに依頼した方が良いと思う」
そうコナンくんに背中を押された。別に毛利探偵に拘っていた訳ではない。ただ知っている有名な探偵が毛利小五郎だっただけ。
またこの話を毛利探偵に話すよりは、このまま安室さんへ依頼した方が手っ取り早い気もして。何より彼は毛利探偵とも繋がっているのだし。
「では・・・お願いしても良いですか?」
「もちろん」
にっこり優しい笑顔で返され、不覚にもドキッと少しだけ心臓が跳ねた。
「ただし、仮にこれが殺人で犯人がいた場合、見つけても復讐しようなどとは思わないでくださいね」
先程とは違う心臓の跳ねを感じた。
この人は心の中を見透かしているのか。
もちろんそんなことは考えていなかったのだが、心のどこかではその可能性を考えていたかもしれない。
「大丈夫です」
安室さんの目を見てはっきり応えた。
彼なら安心して任せられる。どんな結果であれ、受け止められる。根拠はなかったがそう強く感じた。
その後、兄のいなくなった時期や連絡の内容、今後の捜査の仕方などを話した。
終始真剣に向き合ってくれる安室さんを完全に信用しきっていて。
「ところで、どうして行方不明だった彼が亡くなったと分かったんですか?」
そういえば肝心なことを話していなかった。
質問を聞き、慌てて鞄から一通の手紙を取り出した。