第74章 そして※
「・・・ごめんなさい」
謝ったものの、どこか納得できていない自分もいる。
それは昨日彼に火照らされた体のせいだろうか。
そこまで考えてやっと、バーボンの時の彼を拒みつつも感じて、その責任を零に押し付けようとしていることに気付いた。
それに至極醜さを覚えた。
「謝らなくて良い。・・・寧ろ謝るのは、僕の方だ」
彼のその言葉には、激しく首を横に振って。
何も謝られる覚えは無いと見つめれば、苦しそうに視線を逸らされた。
「・・・言っておきながら、抑えきれなかった」
僅かに眉間に皺を寄せ、珍しく恥ずかしそうに言う彼に、流石に察しがついた。
彼のモノが主張しているんだと気付けば、どこか嬉しさのようなものが込み上げて。
求めていたのは、私だけじゃなかったんだ、と。
「だから今はなるべく・・・」
「零」
何か言いかける彼の言葉を遮って、服を掴みながら重い体を起こしかけると、咄嗟に零がそれを支えてくれて。
何とか互いに向き合うようにベッドに座れば、懇願するような目で彼を見つめた。
「・・・私がしちゃ、ダメ?」
この上無い、我儘だと思う。
彼の思いやりも踏み躙って、自分の欲望に忠実で、寧ろ罪なんじゃないか、とすら思う。
でも、お互いこのままにも、できなくて。
「・・・・・・っ」
彼は暫く驚いた様子で私の顔を見つめた後、手で口を覆って顔を逸らした。
「・・・そんな目で見ないでくれ」
恥ずかしそうにそう言う彼に、心臓を締め付けられた。
妙に鼓動が早くて、息が苦しい。
耳を赤く染めている彼に気付けば、それは尚更強くなって。
好き。
その思いだけで体も脳も満たされた。
「・・・っ、ひなた・・・!」
向き合っている体の距離を詰め、彼の肩に手を置きながら跨るように密着させると、赤みを帯びる零の耳にそっと唇を触れさせた。
その瞬間、ピクリと肩を動かした彼を、この上無く愛おしく思った。
普段なら絶対にしない。
でも今は、力の入りにくい傷だらけの体が、何故か自然に動いてしまう。
それは、どこか不安という要素もあったからだと思う。