第74章 そして※
ーーー
「・・・・・・っ」
痺れるような体の痛さに目を覚ますと、もう辺りには明るい日差しが差し込み、部屋を僅かに暖かくしていた。
「まだ寝てる・・・」
昨日と何一つ変わっていない状況に気付くと、私の上で静かに眠る彼に視線をやった。
長い睫毛に、少し癖のある髪の毛、褐色の肌に、筋肉のついた体。
普段こんなにじっくり見ることなんてないが、相変わらず全てが綺麗だと思えて。
・・・相当疲れているのだろう。
それは、昨日の彼の状況からでもよく分かる。
彼のこの服・・・あの時、ミステリートレインや初めてベルモットと会った時にも来ていた。
ということは、直前までバーボンとして仕事をしていたということだろう。
以前はこの辺りに拳銃を隠していたようだが・・・と、ミステリートレインでの出来事を思い出しながら、彼の体を触っていると。
「・・・・・・ッ」
「・・・零・・・?」
それで起こしてしまったのか、彼の体が僅かに動いた。
「・・・ひなた・・・?」
寝ぼけた顔で体を起こすと、まだ意識がハッキリしていないであろう中、私の名前を呼んだ。
たったそれだけの事だったが、それにどれだけの安心感を覚えたことか。
「・・・おはよう、零」
ずっとのしかかっていた彼の体が退かされたものの、痺れや痛みからすぐに体は動かせなくて。
「す、すまない・・・大丈夫か・・・?」
それに気付いた彼は、慌てた様子で私の首に手を回して僅かに浮かせた。
こんな彼は珍しい。
いつも冷静な彼が、こうなる姿を何度も見たいと思っていた。
それがこんな形になるとは思いもしなかったが。
「大丈夫、ちょっと痺れてるだけだから。・・・それより」
問題は彼だ。
「零、ちゃんと寝てないでしょ」
私の問いに、僅かに目を反らせた彼に確信を持った。
やはり彼はいつも人の心配ばかりで、時々自分を気にしない時がある。
自己管理はしっかりしているとは思うが、無茶をするのもまた事実で。