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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第74章 そして※




「零・・・!」

キィ・・・、と静かに軋む扉の音と共に姿を見せたのは、紛れもない彼で。
それはこの暗闇でも、分かった。

・・・けれど。

「今日は戻らないと思って・・・た・・・」

近付きながら言った言葉の、語尾を弱めて。
彼に伸ばしかけた手も、直前で引っ込めた。

まるで私に気付いていないように、壁に体を預けた彼は大きくため息を吐いて。

「・・・零・・・?」

どこか・・・おかしい。

目の前にいるのは零で間違いないはずなのに。
何か違和感があって。

大きな胸騒ぎのようなものを感じた。

「・・・ああ、貴女ですか」

やっと私の存在に気付いたと思うと、一言、冷たい口調でそう言われた。

・・・違う、彼は零だけど・・・零じゃない。

背筋にゾクッという悪寒と同時に、そう感じた。

「・・・・・・っ」

ゆっくり靴を脱ぐと、そのまま私に近付いてきて。
それが怖くて、彼が歩みを進める度に私は同じように後ろへと後ずさっていった。

「・・・れ・・・っ」

声が、上手く出せない。

さっきまであんなに嬉しかったはずなのに、今は恐怖の方が勝っている。

「どうして逃げるのですか」

そう言った彼を、僅かな月明かりが照らした。
その時に気付いたのは、彼がいつも身に付けているような服では無いということ。

・・・でもそれは、二度程だけ見た記憶がある。

「・・・っ!?」

警戒は怠らなかったが、一瞬だけ作ってしまった隙を狙われた。

いきなり強く壁に押し付けられると、手首も同じように壁へ押し当てられながれをグッと握られて。

全身に電気が走ったような痛みと、ビクともしない掴まれた腕に恐怖を煽られ、反射的に瞼を固く閉じた。

「どうしたんです、僕を求めに来たのではないんですか?」

・・・が、彼の言葉で、嘘のように簡単にその瞼は持ち上がった。


求めに来た。


零の・・・バーボンのその言葉は、嫌な胸騒ぎを覚えさせるには十分過ぎるものだった。



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