第73章 未休み
「キュラソーは・・・」
話し始める前に一度小さくため息をつくと、その際に閉じた瞼をゆっくり開きながら話し始めてくれた。
「・・・亡くなったよ」
・・・え?
「ど、どういうこと・・・、まさか・・・」
公安が直接手を下すことはないだろうが・・・。
組織やFBIが始末した、なんて事は十分にありえそうだ。
「組織が・・・と言えばそうかもしれないし、事故だと言えばそうとも言える」
益々わからない。
事故・・・というのは。
その疑問は口にしなくても十分彼に伝わっていたようで、私の視線を受け取った彼はその言葉に隠れた真意を話し始めた。
「実はあの転がっていった観覧車に、探偵団のみんなが乗ってたんだ」
「嘘・・・っ」
あんな危険な場所に、子ども達が・・・?
「あ、大丈夫。怪我とかは無いから。・・・でもアイツらを守る為に、彼女は自ら犠牲になった」
零や赤井さん、コナンくん達が手を合わせて転がる観覧車を止めようとしたが止まらず、水族館にくい込んで行く半ばで、彼女の運転するクレーン車が観覧車に突っ込んだらしい。
それは子ども達を助ける為だったと思う、と。
結局、クレーン車ごと観覧車に踏み潰されてしまい、彼女はその場で遺体として運ばれた。
コナンくんは、終始悲しい目をしながら話してくれて。
「・・・ありがとう、教えてくれて」
「ううん、助けられなかったのは悔しいけど・・・いつかこの手で奴らを・・・」
悲しさから、怒りと闘争心が芽生えた瞳になると、いつもの彼に戻ったと思えた。
いつも彼は正義を貫き、徹底的に謎を追い掛ける。
そんな姿は、どこか零と重なるようだった。
「そういえば如月さん、僕が電話した時、本当は赤井さんといたんでしょ?」
「・・・そうだね」
今更隠しても仕方ない。
観覧車で彼と鉢合わせしてしまった時点で、その辺りは全てバレているだろう。