第73章 未休み
「ありがとう。それと・・・博士にもコナンくんにも、悪いことしちゃったね」
それを聞いたコナンくんは、ゆっくり首を横に振った。
「僕も同じ状況だったら、如月さんと同じようにしてたと思う」
「・・・蘭さん、とか?」
その名前を口にした瞬間、彼の顔がどんどんと赤く染っていくのが見えて。
ああ、やっぱりこういう所は子どもらしい。
「そ、それより・・・安室さんと、あれから会った?」
「・・・どうして?」
沖矢さんの前で隠さず話をするという事は、彼も昨夜の出来事は知っているんだろう。
・・・ここに来ている時点でそう言える、か。
「いや・・・あれから話とかできなかったし・・・」
彼の目には心配、という文字しか見えなかった。
特に変な探りを入れてきていると言う訳では無さそうだ。
別に、今探られても私からは何も出てこないけど。
「一度だけここに来たよ。すぐに帰っちゃったけどね」
「そっか・・・」
今日また来ると彼は言っていた。
それを伝えても良いものか、正直迷ってしまって。
それは、コナンくんとは反対側に腰掛ける、一人の人物が居ることが原因と言えた。
「・・・ねえ、キュラソーがどうなったか、コナンくん知らない・・・?」
「聞いてないの?」
知っているものだと思っていたと目を向けられれば、何故彼は知っているのかと逆に疑問にすら思った。
「赤井さんに聞いたけど・・・はぐらかされちゃった」
「赤井さんにも会ったの?」
あれを会った、と言えるのだろうか。
私は別に会うつもりなんて無かったけど。
「ここに来たよ。何しに来たのか正直分からなかったけど」
愚痴を零すように言えば、彼は何故か向かいに座る沖矢さんに、呆れたような視線を向けた。
それを追い掛けるように、私も沖矢さんへと視線を動かすと、彼はコナンくんの視線を嘲笑うように返していた。