第73章 未休み
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あれからどうやって眠ったのか覚えていない。
気が付けば、私の周りでは慌ただしく看護師さん達が手当の準備をしていた。
部屋にある時計を見れば、もうお昼が来ようとしていて。
「痛みはどうですか?」
「あ・・・思ったよりは平気です」
看護師さんの問いに、改めて体を動かしてみせた。
腫れるかもしれないと聞いていたが、それは多少で済んでいるようで。
昨日は動かなかった手も、僅かだが動かせた。
意外と人間の体は頑丈なんだと気付かされたようで。
一通り手当てが終わると、一気に部屋は静けさに包まれた。
と同時に、寂しさも押し寄せて。
気を紛らわすように外へと目を向けるが、そこからの眺めは決して良いとは言えなかった。
「・・・!」
看護師さん達が出て行って数分後、扉をノックする音に気付いて、そちらに首を動かした。
「はい」
きっと零だ。
離れてからまだ数時間だというのに、こんなにも嬉しいなんて。
その理由は、説明する事ができなかったが、とにかく胸が踊るようだった。
・・・しかし。
「失礼します」
カーテン越しに聞こえた声は、零のものでは無くて。
でも、聞き覚えのある、久しぶりに聞く声。
「こんにちは、如月さん」
「コナンくん・・・と、どうして・・・」
最初に聞こえてきたのはコナンくんの声ではない。
その声の主は、コナンくんの後に姿を見せた。
「沖矢さんがここに・・・」
「おや、お見舞いに来てはいけませんでしたか?」
手にしていた寄せ植えを見せながら、こちらに近付いてきて。
それを私の傍にあるサイドテーブルに置くと、何も言わず椅子へと腰掛けた。
「大丈夫?」
「あ・・・うん、私は大丈夫。コナンくんは?」
「僕は平気。あ、博士も心配してたよ」
博士・・・そういえば、あの後私が出て行ってしまったきり会えていない。
次に会った時は、きちんと謝らなければ。