第73章 未休み
あれから一人で救急車に乗せられると、私の意志とは関係無く、東都中央病院へと向かった。
救急車の車内で何があったのか隊員に聞いたが、情報は錯乱していて、何が起きたのか分かっていない様子だった。
きっとこのまま公安や組織によって、何もなかったか、ただのテロように処理されるんだろう。
・・・どんな手を使ってでも。
ーーー
病院に着くと、すぐに検査をされた。
幸い大きな怪我は無いが、強い打撲による全身の痛みがある為、数日の入院を命じられた。
帰っても彼は居ないだろうから。
そう思うと、本当は嫌な入院も素直に納得できた。
個室を希望だと聞かされていると説明を受けたが、そんな事を言った覚えは無くて。
否定をしかけたところで、零が伝えていたのか・・・と思うと同時に、入院が必要なことが零には分かっていたんだと思うと、少し寂しくなった。
「何かあれば呼んでください」
「はい・・・ありがとうございます」
窓から差す淡い光を感じれば、もう夜明けだということに気がついて。
ベッドに寝かされ、部屋を後にする医者と看護師に軽く頭を下げて見送った。
相変わらず、体はあまり言うことをきかない。
明日になれば体が腫れるかもしれないと説明を受けていて。
あれだけの衝撃を受ければ、それくらいは当たり前かとため息をついて、天井を見上げた。
部屋は違うかもしれないが、そこは少しだけ見慣れた景色で。
肩の傷を作ってしまった時もこの病院だったことを思い出しては、あの時は赤井秀一とほぼ毎日過ごしていたことも、ふと思い出して。
「赤井さん・・・大丈夫かな・・・」
組織のヘリを狙撃した時から、彼の姿は確認していない。
簡単に死ぬような人では無いと思うが、それでもあの崩壊具合からすれば、無傷ではないだろう。
そんな思いから、何となく口にしてしまった。
「人の心配より、自分の心配をしたらどうだ」
「!!」
気配なんて全く無かったのに。
突然入口の方から声がして。
窓に向けていた視線を、恐る恐る声がした方へと動かしていった。