第72章 悪夢を

「･･･？」

暫くして、お互いに異変に気付いた。

さっきまで狙いを定めていなかった弾道が、今は明らかに誰かを狙ったものになっている。

それが誰なのかは分からないが･･･。

「今だ･･･！」

零の合図と共に、再び走り出した。

所々崩れている足場は不安定極まりなく、急ぎたくても急げない状況だった。

それでも必死に彼へと着いて行き、裂かれるように崩れている観覧車中央の上部へとたどり着いて。

そこから聞こえた音は、恐らくヘリのプロペラ音。
ここに吹いてくる風も、殆どはきっとそれによるものだろう。

「コナンくん･･･っ、赤井さん･･･！」

崩れた足場の先、下の方にふと視線を向けると、そこにあった二人の姿を確認して安堵した。
様子からして、大きな怪我などは無さそうで。

「そのライフルは飾りですか！！」

柵から身を乗り出しながら、零は赤井さんの方へと叫んだ。
それによって彼らは私達の存在に気付き、こちらに視線を向けてきて。

その頃にはいつの間にか、銃撃は一旦落ち着きを見せていた。

「安室さん、如月さん！」
「反撃の方法は無いのか！FBI！！」

こういう時は流石に協力体制なのだな、とどこか安心のような感情を覚えながら、自分達があまりにも丸腰であることを突き付けられた。

私達の中で唯一、武器になりそうなものをもっているのは赤井さんのライフルと･･･それをしまう為の零が背負っているケースに詰められた、爆弾くらいで。

「あるにはあるが、暗視スコープがお釈迦になってしまった。使えるのは、予備で持っていたこのスコープのみ。これじゃあ、どデカい鉄の闇夜のカラスは落とせんよ」

例え暗視スコープがあったとしても、そのライフル一本であのヘリが撃ち落とせるとは到底思えないが。