第72章 悪夢を
「きゃあッ!?」
さっきまでとは違う揺れと衝撃。
明らかにこれは・・・銃撃だ。
「ひなた!大丈夫か!!」
「だ、大丈夫・・・ッ」
どこからか彼の声がする。
それに必死に答えるが、そう距離は遠くないはずなのに、鉄同士がぶつかり合う音に掻き消されて上手く届いてはいないかもしれない。
バラバラと上から降ってくる鉄くずから身を守ろうと、無意識に腕で頭を抱えた。
手段は選ばない。
そうは聞いていたが、こうも大胆に攻めてくるなんて。
「ひなたっ!」
「零・・・!」
言葉通り、すぐに戻ってきた彼の手には別の爆弾があって。
何故かそれを素早く赤井さんのライフルバッグへと詰め込むと、私の元へと駆け寄った。
「赤井は何をしているんだ・・・っ」
私の肩を持ち立たせると、なるべくゆっくり、それでいて急いで、どこかへと小走りで誘導していった。
その中で、零は赤井さんへの愚痴を口にして。
これでも時間を稼いだのかもしれない。
そうは思ったが、そんな事言えるはずも無くて。
「・・・っひゃ・・・!」
確実に足を進める中、銃撃は確実に狙ってくるように時々こちらに弾道を向けた。
まるであちらから、ここが見えているように。
「熱感知で見ているのか・・・っ」
突然足を止めると頭を屈められ、再び体を抱き寄せられた。
怖くて足が竦む。
全身が震える。
さっきまで抑えられていた恐怖は、突然溢れたように襲ってきて。
自分から足を踏み入れたことだ。
震えている場合じゃないのに。
それでも体は勝手に反応してしまって。
「安心しろ、僕がいる」
その言葉に救われないはずがない。
思わず泣きそうになってしまいながら、外の様子を伺う彼の横顔に目をやった。
僅かに差し込む明かりは彼の瞳を輝かせ、そこから目を離せなくなる魔法をかけたようだった。