第72章 悪夢を
「姿が見えれば落とせる?」
「ああ」
「でも、どうやって・・・」
そうだ。
姿が見えたからといって、あのヘリを落とせるとは・・・。
「ローターの結合部を狙えば恐らく」
「結合部なんて見えなかったよ!?」
ローターの結合部?
そんなの・・・そもそもそこを撃ち抜くことなんて可能なんだろうか。
それに、私にはそこがどこかすら分からない。
「正面を向き合っては無理だ。何とか奴の姿勢を崩し、尚且つローター周辺を五秒照らすことができれば」
五秒・・・僅かだといっても、照らせそうな物も、相手の姿勢を崩せそうな物も手元に何も無くて。
「照らすことはできそうだけど・・・大体の形が分からないと、ローター周辺には・・・」
そう話すコナンくんの言葉に耳を疑った。
彼は一体どうやって、この離れた距離にあるヘリを照らすと言うのだろうか。
・・・でも、僅かな可能性が目の前にある。
なのにあと一歩届かなくて。
「・・・!」
「零・・・?」
何かを思いついたように、突然彼は背後で何か作業を始めて。
ライフルバッグを下ろしたと思えば、何故かそこに詰めていた爆弾を取り出した。
何をする気だろうかと傍でそれを見守っていると、零は爆弾についている色々な何かのボタンを、険しい顔をして押し始めた。
何をしているのか気にはなったが、とても話し掛けられるような雰囲気では無く、爆弾と彼の顔をただ交互に見る事しかできなかった。
「・・・ッ!?」
そんな時、収まっていた銃撃は不意をつくように突然再開されて。
今度のそれも、どこか的確に狙っているように感じた。
「車軸を狙っているのか・・・っ」
「!!」
零が手を止めないまま、更に顔を険しくさせながらそう呟いて。
確か車軸には、まだ爆弾が残っていたはずだ。
そんな場所を集中的に攻撃されれば・・・。
「・・・・・・ッ」
ここは確実に、崩壊する。