第72章 悪夢を
「・・・っ!!」
突然、零は私に覆い被さって床へ押し付け、頭を抱え込むように彼の胸に埋められると、力いっぱい抱き締められた。
それは苦しいという言葉では片付けられず、息が止まってしまいそうなくらいな力強さで。
爆発してしまう、という恐怖を一瞬忘れてしまいそうになるくらいの衝撃はあった。
「・・・・・・?」
だが、暫くしても爆弾は音沙汰無く、鳴り響いていた高音もいつしか消えていて。
息苦しさを感じていた彼の体はゆっくりと離れ、様子を伺うように爆弾の方へと向かっていった。
それに続くように、私も彼の背中からゆっくりと爆弾の方へ顔を覗かせると、そこには爆弾の電光板にRECEPTION OFFの文字があった。
受信が切られた・・・つまり、遠隔での操作はできなくなったということで。
「す、すごいよ・・・零・・・!」
「・・・ギリギリだったが、な・・・」
背後にある柵へもたれ掛かるように背中を預けると、彼は大きく息を漏らしながら、そう答えた。
大きなプレッシャーの中、こんな大きな仕事をこなせるなんて、本当にすごい。
・・・こうやって、彼は日本を守っているんだと思うと、私まで誇らしさを感じるようだった。
「僕は近くの爆弾を回収してくる。ひなたはここを動くな、すぐに戻るから」
落ち着いたのも束の間、彼はすぐに立ち上がり、次の動きへと移った。
今日は何度もその言葉を言われている気がするが、赤井さんとは違う事が一つだけあった。
「・・・うん」
すぐに戻る。
たったその一言があるだけで、安心感が桁違いだった。
まだ明かりは戻らず、視界が良好とは言えないが、私が頷くと暗闇の中に彼は消えていった。
次にどんな動きがあるか分からない。
とりあえずすぐに動けるようにと、彼が広げたままだった工具を元に戻し、赤井さんのライフルバッグへとしまい込んだ。
そして、次の動きは予想以上に早く来てしまった。