第71章 純黒の
画面が暗くなり、振動も落ち着きを見せたスマホを見つめながら、細く長くため息を漏らした。
「安室くんなら心配いらない。簡単に死ぬ男ではないからな」
いつだったか似たような台詞を聞いたような気がする、と思いながら、そう告げた彼の横顔に視線を移して。
「・・・そんな事、分かってます」
言葉では強がっていても、本当は心配で。
でも、不安を口にすれば本当になってしまいそうなのも怖かったから。
「スマホの解析に携わってくれた事には、改めて感謝しよう。途中で抜け出したのは、関心しないがな」
「・・・すみません」
それは・・・自分でも、責任感の無い事をしてしまったと反省している。
帰ったら、博士にもコナンくんにも、きちんと謝らなければ。
「そして、これから向かう東都水族館だが・・・奴らは恐らく、観覧車に仕掛けをしていると考えている」
「観覧車に・・・?」
何故?と小首を傾げながら問うと、彼は真っ直ぐ前を見たまま煙草を咥えて、話を続けた。
「詳しく説明している暇は無い、とにかく向こうに着いたら指示をする。・・・ついてくるなと行っても、ついてくるのだろう?」
「当たり前です」
ここまで来て、何もせずに帰ることはできない。
足を引っ張る事はしたくないが、できる事だけはしたい。
「無理に帰して、勝手な事をされても困るからな」
それに対しては言い返せなくて。
言い当てられた悔しさから、思わず彼から目を逸らした。
ーーー
程なくして、車は駐車場から少し離れた場所へと止められて。
車を降りると、車内で彼から軽く指示を貰っていた通りに、観覧車へと足を動かした。
係員に見つからないよう、真っ暗な裏口を通っては中へ忍び込んだ。
「こっちだ」
妙に内部の構造に詳しい彼に必死に着いていきながら、それでも頭の片隅にあるのは零のことで。
いつも彼は人を守ることばかりで、自分のことは守っていない。
そう思ってしまうのは・・・間違いだろうか。