第71章 純黒の
『・・・まあ、いいや。今、誰かといる?』
「い、今・・・?」
赤井さん・・・と言いかけたが、それは直前で飲み込んだ。
言っても良いのかと視線で問うと、赤井さんは黙ってゆっくりと数回首を横に振った。
「・・・ううん、一人。どうして・・・?」
隠さなければいけない理由は分からないが、赤井さんの指示を守って、コナンくんにはそう返した。
彼に嘘が通用するだろうか。
でも、小さな嘘はこれまでもついてきた。
・・・嘘に大きいも小さいも、無いけれど。
『・・・なら良いんだ。あのさ、如月さん・・・彼女が組織に送ったあのメールを見て、どこに行ったの?』
「え・・・えっと・・・」
何て答えれば良いだろう。
沖矢さんの所に行ったけど、結局赤井さんに助けを求めました・・・なんて言えないし。
「・・・ごめん、黙秘」
『だろうね』
本当は全部、気付いているんじゃないだろうか。
私が赤井さんと居ることも、零の様子を見に行ったことも。
『そういえば、彼女のスマホを通して組織の奴らには、バーボンとキールは関係無かった、ってメールは送っておいたから』
成程・・・博士がやってくれたんだ。
冷静に考えれば、それに気付ける可能性はあったのに。
さっきまでとにかく・・・冷静でなかったから。
・・・赤井さんは、この事をコナンくんから伝えられると予想して、私に電話を取らせたのだろうか。
そうだとすれば、改めて末恐ろしいと感じ、横目で彼を見た。
『FBIの人達からも、安室さん達は無事だって教えてもらったから、安心して』
「そ、そっか・・・。良かった、ありがとう・・・」
それはきっと、隣にいる彼がFBIに連絡したのだろう。
今、零がどうなっているかは分からないが、それまでの事は既に知っている。
適当にお礼を返せば、無茶はしないでね、と一言だけ告げられて電話を切った。
きっと彼は、私がどこに向かっているのか分かっているのだろう。
敢えてそれを止めないのは・・・止めても無駄だということも、きっと分かっていて。