第71章 純黒の
「それと・・・キールとバーボンはノックでは無いと、キュラソーから連絡があったみたいなんですが・・・」
それは何故なのかと、彼の横顔に視線で問い掛けて。
少しの間の後、彼は何故か言葉無く座席の下の方を指差し、私の注意をそちらへ逸らせた。
彼の指差した方向へ素直に目を向けると、そこにはバイブ音で主張を続ける私のスマホが落ちていた。
「・・・あ・・・」
行きに激しく揺れた車内で落としてしまったのか、と思いながらそれを手に取った瞬間、小刻みに揺れていたスマホは突然その振動を止めた。
誰だったのだろう、と着信履歴を覗いた時、驚きで思わず目を見開いてしまった。
「こ、コナンくん・・・?」
そこには彼からの着信履歴が数十件入っていた。
きっと、あの時勝手に飛び出してしまったから・・・。
彼からの鬼のようにかかってきている電話の理由は分かっているが、赤井さんに対しての質問の答えにはなっていないように思えた。
「わ・・・っ!」
そんな事をスマホを手にしながら考えていた時、落ち着きを見せていたそれは再び振動を始めて。
油断していたところへの突然のそれに、思わず落としそうになったスマホを、受け止めては握り直した。
「・・・・・・」
赤井さんが何も言わずにスマホに気付かせたということは、電話には出ろという事なんだろう。
そう思って、あまり気持ちは乗らないが、恐る恐る受話ボタンに指を伸ばした。
「も、もしも・・・」
『如月さん!?今どこ!!』
耳を突き抜ける勢いで、彼の心配と怒りの混じった声がスマホから飛び出してきて。
思わずそれから身を守る為に、スマホを耳から離し目を瞑ってしまった。
「ご、ごめん・・・」
彼からの質問には答えないまま、ただその言葉を伝える事しかできなくて。
何かを察してくれたのか、コナンくんはそれ以上責める言葉は言わず、電話越しにため息だけを漏らした。