第71章 純黒の
「あの・・・っ、彼女は・・・」
「問題無い、FBIが助けに来る」
進み掛けた足にブレーキを掛けて、まだキールの残る倉庫に目を向けて問うと、彼はそう告げた。
今すぐ助けに向かう事ができないのには少し心が痛むが、これは私が首を突っ込んで良い案件では無い。
彼女もまた、CIAとしての役割があるのだから。
ーーー
来た時と同じ場所にあった彼の車まで戻ると、即座にそこへ乗り込んだ。
一つ引っ掛かりを覚えたのは、ここに来る途中、倉庫の外にはまだ零の車が残っていた事だ。
彼は、走ってどこかへ逃げたのだろうか。
「・・・・・・っ!」
一瞬、そんな事を考えて上の空になっていた時、突然赤井さんの手が私の頭へと乗せられて。
その重さに驚いて彼に視線を向けると、その口角は少し上がっているように見えた。
「ちょ・・・、赤井さ・・・っ」
「よく動かなかったな」
頭に乗せた手を乱雑に動かし、撫でるとも髪を荒らすとも言えるような行動をとって。
それにどこか安心感を感じたのは、嘘では無かった。
彼の手が離されると、乱れた髪を手ぐしで元に戻している最中、その車は急に発進させられた。
「奴らのその後の会話を聞かせてもらおう。まさか聞いていなかったとは、言わせんぞ」
「・・・聞いてましたよ」
その為に私をここに置いていったのだろう、と僅かに睨めば、それに対しては確実に口角を上げて返された。
「それで、奴らは何と言っていた」
手短に、という言葉が見え隠れしているように感じ、奴らの会話を掻い摘んで話し始めた。
「・・・とりあえず、東都水族館に向かったようです。キュラソーもそこに向かっていると、言っていました」
何故、水族館なのかは分からないけど。
「それと、何かとんでもない武器を持ち込むように、電話でジンが指示していました」
「武器?」
何を示しているのかは分からないが、ジンの言っていた言葉をそのまま赤井さんに伝えると、僅かにその表情を曇らせた。