第71章 純黒の
その場に取り残されたキールが気になったが、助けに向かう事も許されなくて。
車が出る音はした。
けれど、どこかにまだ誰かが潜んでいるかもしれない。
それに・・・。
赤井さんから、絶対に動くなと・・・言われているから。
「・・・・・・」
・・・零は、どこに向かったのだろうか。
この数日、電話が繋がらなかった理由は何となく分かったが・・・やはり、伝えてほしかったという我儘な思いがある事も事実で。
・・・私に言っても、力になれないから・・・だろうか。
「・・・ッ!!」
完全に注意力を失っていたその瞬間、突然背後から肩に重みを感じた。
誰かの手がそこに触れたのだと分かった瞬間、血の気が引いて。
見つかった。
そう思いながら、ゆっくりと後ろを振り返った。
「あ、赤井さん・・・?」
そこに立っていたのは、姿を消した彼で。
それが分かった瞬間、緊張の糸がプツリと切れ、体を支える糸も繋がりを失い、崩れるようにその場にへたり混んでしまった。
「大丈夫か」
「大丈夫じゃありませんよ・・・、変に驚かさないでください・・・っ」
声を大にして言いたい気持ちを抑えつつ、限りなく抑えた声量で、赤井さんを睨みつけつつ言い放った。
「悪かった。・・・立てるか」
そう言って彼は、それに捕まれと言うように、左手を差し出してきて。
一度それに目をやり、確認するように赤井さんへ視線を動かした。
何も言わない彼に妙な威圧感を感じながら、もう一度、彼の左手に目をやって自身の手をゆっくり重ねた。
「・・・っ」
グッと力強く手を引かれると、自然と体は浮くように持ち上がり、力の抜けていた体は嘘だったみたいに、しっかりと両足で立つことができていた。
「行くぞ」
どこに、何て言ってくれない。
それは、これから車内で話す事で決まるのだろう。
私が見聞きした、それで。