第71章 純黒の

「案ずる事は無い。俺の読みが正しければ、そろそろ動きがあるはずだ」

キュラソーからのメールを不思議に思う中、ジンはスマホを取り出し、どこかへ電話を繋げた。

「･･･やはりな。それで、目的地は？」

その通話は静かに始まり、電話相手にそう尋ねた。

ただ、何を話しているのかは、私には皆目検討もつかなくて。

「例の機体を用意しろ。あれの性能を試す、良いチャンスだ」
「ジン、まさか本気であれを使う気じゃ･･･！」

ベルモットは、ジンのその言葉に少なからず動揺した様子を見せた。

機体･･･と言っていたが、それが何なのかも分からない。
ただ、良いもので無いことは確かだろう。

「兄貴、駄目です！･･･逃げられました」
「構わん。バーボンとキールは後回しだ。まずはキュラソーを奪還する」

･･･良かった。

まだ安心しきるには早いが、ウォッカのジンに対する報告に、一先ず胸を撫で下ろした。

バーボンは･･･今は少なからず無事だ。

「しかし、病院には警察や公安どもが･･･」
「キュラソーは既に病院を出た」

病院を？
ということは、本当に記憶が･･･？

「では、どこへ･･･？」
「行先は･･･東都水族館」

ウォッカの問いに対し、楽しくなってきたと言わんばかりの声色で、そう告げた。

でも･･･何故今、東都水族館なんだろう。

「ジン･･･！貴方まさか、こうなることを読んであの仕掛けを･･･！？」

仕掛け･･･？
読んでいた･･･？

まさか･･･水族館に何かしたの･･･？

「フッ･･･ウォッカ、行くぞ！車を回せ！」
「はい！」

疑問ばかりが残る会話を残し、肯定する言葉を口にする程の事でも無い、と笑みを漏らせば、ジンはウォッカと共に倉庫を後にした。

ベルモットは静かにそれを見つめ、暫く何かを考えた素振りを見せた後、キールに何か言葉を掛けてその場を後にした。