第71章 純黒の
「50秒・・・」
「そいつはどうかな?俺は意外と優しいんだぜ?」
着実に進むウォッカのカウントに、力が入らないはずの体が全身強ばって。
助けを乞う様にもう一度赤井さんに視線を向けると、さっきまで動く気配すら見せていなかった彼は、持ってきていたライフルの銃口を倉庫内へと向けていた。
「・・・・・・っ」
何をする気だろう。
まさか、あの男を撃つつもりじゃ・・・。
・・・にしては、銃口が高い位置にあるような気もする。
「40秒」
「仲良く互いを庇い合っているという訳か」
「庇うも何も、僕は彼女がノックかどうかなんて知りませんよ!」
「私だって・・・っ」
・・・バーボンの声にも、焦りが感じられる。
流石にこの状況では、簡単には逃げられないだろう。
・・・彼らだけなら。
でもここには・・・赤井さんが、いる。
「・・・30秒」
「でもこれだけは言える・・・私はノックじゃない!」
「それはこっちの台詞だ!」
否定すればする程、そこには焦りが増やされ信憑性を無くしていく。
だが、それをやめれば、ただ死を待つのみとなる。
絶望以外の何物でも・・・ない。
「20秒!」
「さあ、ネズミはどっちだ?」
「ジン・・・まさか本気で・・・!」
楽しんでいるようにも見えるジンの様子に、再び震えが起きた。
ベルモットも、ジンの考えが分かっていた上でバーボンを連れてきたんだろうが・・・これ以上の行動は彼女にも止められない上に、予想外なのだろう。
「先に泣くのはどっちだ?」
だからこそ、今頼れるのは・・・隣にいる彼しかいないのに。
彼はスコープを覗いたまま、その時を待っているようだった。
「10秒・・・9・・・8・・・7・・・」
ついにカウントダウンが目の前に迫って。
もう、待っている時間は無いはずなのに。
「3・・・2・・・1・・・0!」
「まずは貴様だ・・・バーボン!!」
それが終了した瞬間、ジンが先に指名したのは・・・彼だった。