第71章 純黒の
「・・・・・・ッ!!」
やめて、と叫びたかった。
今すぐ駆け寄りたかった。
でも何も許されない状況に、頭がおかしくなりそうで。
カウントダウンが終わり、ジンが銃を構え直した瞬間、現実から目を背けるように瞳に瞼でキツく蓋をした。
・・・その時だった。
「!?」
「・・・ここにいろ、絶対に動くな」
ガシャンッ、と大きな金属音と倒壊音が倉庫内に響き渡った。
慌てる彼らの声が耳に入ると共に、耳元で小さく赤井さんがそう言い残していくのも聞こえた。
「どうした!」
「ら、ライトが・・・!」
何があったのかと、瞼を上げて倉庫内を覗き直すが、さっきまで点いていたライトが無くなり、辺りは暗闇に包まれていた。
「・・・・・・っ」
どう、なったんだろう。
赤井さんがライフルを構えていた事から、何かを撃ったんだろうが・・・。
何も状況を理解できずにいると、突然小さな明かりが何かを照らして。
「バーボンがいない・・・!逃げたわ・・・っ」
その瞬間、ベルモットがそう叫んだ。
それは支柱に繋がれていた二人を照らしたようだったが、何故かそこに彼の姿は無かったらしい。
ここからでは明かりが乏しく、目視することは難しいが、何とか今の状況は少なからず掴めた。
「くそ・・・っ、どうやって・・・」
ウォッカがそう呟いた瞬間、倉庫にある扉が勢いよく音を立てて開いた。
恐らく、そこから零が飛び出したんだと思った。
開いた扉からは真っ赤な日差しが差し込み、倉庫内を赤く照らした。
これで、中の状況が把握できる。
・・・が、彼は外を飛び出していった。
追い掛けたい気持ちはこの上なくあったが・・・赤井さんからは絶対に動くなと言われている。
今ここで、自分の気持ちを優先することは・・・間違いだ。
「追え!」
ジンの命令が下ると、ウォッカとベルモットが扉に向かって走り出した。
次に捕まれば命は無い。
今はただ、そうならないように祈る事しか・・・できなかった。