第71章 純黒の
反射的に目を瞑り肩を大きく震わせたが、幸い漏れそうになった声は何とか留めることができて。
それが銃声だということは直ぐに判断がついた。
だからこそ、この目を開くのが怖くてたまらなかった。
それでも、真実を自分の目で確かめる為に、ここに来たから。
震える全身や、荒くなっていく呼吸を何とか鎮めながら、ゆっくり瞼を上げた。
「・・・っう、ぐ・・・!」
「キール!」
彼女の呻き声が聞こえた瞬間、バーボンが彼女の名前を呼んで。
その直後、彼女の支柱に繋がれていた体はゆっくりと沈み、その場に膝をついた。
「ほら・・・どうした、キール?続けろよ。手錠を外してえんだろ?」
彼女がどこを撃たれたのか、ここからでは判断ができないが、これで終わりだという状況には到底見えなかった。
本当に二人を殺すつもりなんだろうか。
・・・いや、情報が不確かな中で、そんなはずは・・・。
「まだ容疑者の段階で仲間を・・・っ!」
「仲間かどうかを断ずるのは、お前らでは無い」
私と同じ意見をバーボンが主張するが、ジンはその言葉をバッサリと切り捨て、もう一度銃をカチャリと鳴らせてみせた。
「最後に一分だけ猶予をやる。先に相手を売った方にだけ、拝ませてやろう。ネズミのくたばる様をな!」
・・・そんなの、実質不可能じゃないか。
やはりあの男・・・最初から殺すつもりでここに・・・。
「ウォッカ、カウントしろ」
「了解!・・・60秒」
「・・・ッ!」
どうしよう。
声は出せない為、その気持ちをそのまま隣にいる赤井さんへ視線で訴えた。
彼は慌てること無く、ただジッと様子を伺っているように見えて。
だからこそ、こちらは無意味に焦りを感じてしまった。
「・・・っ、そんな脅しにのるもんですか!」
「もし彼女をノックと言ったら、自分をノックと認めた事になる。そんな奴を、アンタが見逃すハズがない!」
・・・そうだ、例え本当に片方がノックで無かったとしても、それを黙っていたことになる。
そんな人物を、生かしておくなんて考えにくい。
・・・この痛くて吸えない空気は、体をどんどんと汚していく様だった。