第71章 純黒の
「ハッ・・・、流石だな。バーボン」
言葉では褒めているようには聞こえるが、そうにはとても聞こえない声色で耳を通った。
「ノックリストを盗んだまでは良かったものの、警察に見つかり、逃げる途中で事故を起こした」
「挙句、記憶喪失ときたもんだ」
ベルモットとウォッカは、拘束した理由の中身をそう述べた。
やはり、あの銀髪の彼女は組織の人間・・・。
コードネームは、キュラソー・・・。
・・・そうは見えなかったが、彼らの言葉がそれを事実として突きつけてくる。
「じゃあ、キュラソーを奪還して、ノックリストを手に入れるべきじゃないの?我々が本当にノックじゃないか、それを確認してからでも遅くはないはずよ!」
キールの必死な言い分が、倉庫内に響いた。
その言葉に僅かな焦りは感じるものの、やはりCIAというだけあって、落ち着きを完全には失っていなかった。
その僅かに感じる焦りも、もしかすれば彼女の演技かもしれない。
「確かにな。・・・だが」
ジンが同調の言葉を告げるが、即座にそれを打ち消す言葉も付け足されて。
会話を中断したまま徐ろに立ち上がると、カチャッという銃を構える音が聞こえた。
「ジン!」
「兄貴!」
その行動は、ベルモットやウォッカにとって予想外の出来事だったようで。
静止するように各々呼び掛けるが、ジンには届くことの無い様子だった。
本当に・・・撃つのだろうか。
いや、流石に脅しだろうか。
「疑わしきは罰する。それが俺のやり方だ」
赤井さんが言っていた通り・・・低くそう言い放つと、彼は咥えていた煙草を投げ捨てて、乱暴に靴で踏み潰した。
「さあ・・・裏切り者の、裁きの時間だ!」
その瞬間、鼓膜を破るような勢いで大きな破裂音が響いた。