第71章 純黒の
「来い、急げ」
手短にそう言われると、彼は背を向けどこかに歩いて行こうとして。
それに遅れないように慌てて立ち上がると、急いでその背中を追った。
「ど、どこに行くんですか・・・っ」
「君が俺を呼んだのだろう」
そう、だけど。
それでは答えになっていない。
・・・いや。
もしくは、私が思っている事を答えとして良いという事なんだろうか。
「まさか、俺を頼ってくるとはな」
歩みは止めないまま呟くようにそう言われると、どこか負い目の様なものを感じさせられて。
「・・・いけませんか」
「いいや?」
今は何だっていい。
零が無事なのか分かれば。
自分の目で・・・確かめられれば。
「乗れ、話はそれからだ」
頬を伝っていた涙を適当に手の甲で拭いながら歩くと、少し離れた場所に赤い車が止まっていて。
その助手席を開けられると彼にそう言われ、一瞬その姿に視線を移しながらも、少し急いで車に乗り込んだ。
車内は煙草の匂いが強く、彼のヘビースモーカーっぷりが伺えるようだった。
「何か情報を掴んだのか」
車を発進させたと同時に問われれば、私がスマホの解析に絡んでいたことを知っているんだと察した。
ほんの、数時間前の出来事なのに。
「・・・彼女のスマホから組織に向けて、ノックリストに載っている人物のコードネームを送った、メールの送信履歴が見つかりました」
その中にあった三人の名前は既に亡くなったあの諜報員であること。
そして、そこにはバーボンとキールの名前もあったが、メールの文面の続きが途切れていたことを告げた。
「そのことを、あの坊やは?」
「コナンくんですか・・・?多分、博士が伝えてくれていると思いますが・・・」
どうしてコナンくんを気にするのだろう。
疑問に思い彼へと視線を移すと、返答を聞いた赤井さんは、ゆっくり口角を上げていて。
それは何か良いものを確信したように見え、どこか安堵を覚えた気がした。