第71章 純黒の
「・・・なるほど」
今の状態で分かるのは、メールの最後の送信履歴が一番早いと言えた。
逆に言えば、それしか分からない可能性もあった。
彼女がどこにメールを送っていたのか、そしてどんなメールを送っていたのか。
もしそれが、組織に向けたものだったら。
・・・それは、この上ない情報である。
とにかく今は急ぐしかないと、解析する手を早めた。
ーーー
「・・・あと少し」
思っていた以上に早く、あれから小一時間程で作業は進んだ。
解析が完了するまでの時間を示したバーがどんどんと減っていく度、息が詰まるような思いになって。
・・・こういう時に限って、いつもの嫌な予感が来てしまう。
そして・・・いつも。
「・・・!」
解析完了の文字が画面に表示されると、最後に彼女がどこかへ送ったメールの文面が出てきた。
見るのが怖い。
けれど、見なければ始まらない。
この上なくざわつく胸を抑えながら、ゆっくりメールの文面に目を通した。
「ノックはスタウト、アクアビット、リースリング・・・貴方が気にしていたバーボンと・・・キールは・・・」
そこで文面は何故か途切れていて。
そしてやはり、嫌な予感はピタリと当たってしまった。
先に名前が上がっている三人は・・・既に亡くなっている。
となればバーボンとキール・・・つまり、零と水無怜奈も・・・。
「・・・・・・ッ」
どうしよう。
零が・・・殺されるかもしれない。
感じた事の無い感情が、体を蝕んでいく。
体に力が入らなくて、思考が上手く回らなくて。
「・・・・・・」
とにかく・・・博士とコナンくんに・・・。
・・・いや・・・。
もう一人、いるじゃないか。
頼りたくは無いが、FBIに通じているあの人なら、恐らく話は通っているであろう。
そう思った瞬間、力の無かった体が嘘のように勝手に動き出して。
博士のいる別の作業部屋へと向かうと、その扉を勢いよく開けた。