第71章 純黒の
「どこまでの情報が漏洩したのか、一刻も早く把握しなければ。世界中がパニックに陥る」
・・・世界中が?
「あの・・・どんなデータが盗まれたのか聞いても・・・?」
警察庁にあるデータで、組織が欲しがるようなもの。
それに素人の私が、心当たりがあるはずも無くて。
「・・・Non Official Cover」
私の問いに答えたのは、助手席に座るジョディさんだった。
ノンオフィシャルカバー・・・そう彼女は答えたが、何の事か想像もつかず、意味を尋ねるように首を傾げた。
だが、これにもコナンくんは、察しが付いていたようで。
「それは・・・!」
「そう、ノックリストよ」
ノック・・・どこかで聞いた事がある気がするが、思い出せない。
でもそれがとんでもないものということは、この空気とコナンくんの表情が説明してくれた。
「警察庁が掴んでいる、世界中のスパイのリストだ」
そうだ・・・思い出した。
キャメルさんの説明した通り、スパイとして潜入している人達のリストの事だ。
「・・・・・・」
・・・待って、そのリストが盗まれたということは・・・つまり・・・つまりは・・・。
透さんも・・・そのリストに・・・?
「てことは、組織に潜入しているスパイが・・・」
コナンくんがそこまで言いかけたが、私を気にしてかその先は口を噤んだ。
・・・恐らく、そのノックリストに載っている人物は皆消される・・・そう言いたかったのだろう。
その中には勿論、零のことも入っているはずで。
「それだけでは無い。ノックリストが公開されたら、世界中の諜報機関が崩壊するかもしれん」
「それって・・・奴らが諜報戦争の要を握ったってことなんじゃ・・・」
・・・とてつもなく、大きな話になってきている。
その片鱗に、僅かでも私が噛んでいる事が不思議で不安で、恐ろしくて仕方がない。
「そう。となると、今回の三件の暗殺は、単なる始まりに過ぎんのかもしれん」
ジェイムズさんのその言葉に、全ての感情が煽られ、冷や汗と震えが止まらなくなってしまった。