第71章 純黒の
コナンくんに誘導されるまま車に乗り込むと、運転席にはキャメルさん、助手席にはジョディさん、そして後部座席に見知らぬ、髭を生やした男性が座っていた。
見た目からして50代から60代くらいだろうか。
・・・どうやら会いたくない彼はここには居ないようで、どこかホッとしている自分がいた。
「君が、如月ひなたさんかね?」
私の名前を知っているということは、彼もFBIの人か。
「はい・・・そうです」
僅かに戸惑いながら、そう短く返事をすると、彼は納得したような表情をして腕を組んで。
「成程、確かによく似ている」
・・・ああ、母の事を言っているのか。
ということは、彼は古くからFBIにいるのだろう。
「おっと、名乗るのが遅れてすまない。私はジェイムズ・ブラックだ。君の母親の事はよく知っているよ」
「ジェイムズは私達の上司だから、安心して」
警戒心が出てしまっていたのか、ジョディさんがジェイムズさんの言葉に、そう付け足して。
別にそんなつもりでは無かったけれど。
「それで・・・どうして私がここへ・・・?」
ジョディさんだけでなく、キャメルさんや上司であるジェイムズさんまでいる。
そして、嫌でも感じるピリついた空気。
これから話す事が良い話で無いことは、雰囲気だけで十分察しがついた。
「そうだな、早速だが本題に入ろう」
ジェイムズさんはそう言って、スーツの内ポケットから三枚の写真を取り出し、私達に手渡した。
そこには男性二名、女性一名それぞれの顔が写っていて。
いずれもそれは外国人のようだった。
「イギリスMI6、カナダのCSIS、ドイツのBND・・・各国の諜報部員が、次々と暗殺された」
「!」
ということは、この写真は・・・その暗殺された諜報部員の人達、ということか。
・・・でも、何故それを私達に?
「まさか・・・っ」
察しの悪い私と違い、コナンくんは既に何かに気付いたようで。
少し置いてけぼりになっていることを感じつつも、ここは大人しく口を挟まないことを選んだ。