第71章 純黒の
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次の日の朝。
昨夜博士が行ってくれたスマホのデータ修復作業を、一度私が引き継いだ。
そこまで複雑な物では無かったが、簡単とも言えなくて。
博士のパソコンを借りながら、少しづつではあるが作業を確実に進めていった。
「はい・・・?」
その作業中、突然ドアをノックする音が聞こえて。
哀ちゃんだろうか、と思いながら視線を向けて返事をするが、姿を現したのは彼女ではなくコナンくんだった。
「おはよう、如月さん」
「コナンくん?おはよう」
スケボーを抱えてこちらに寄ってくると、様子を見るようにパソコンの画面を覗き込んだ。
「どう、できそう?」
「大丈夫。でも、もう少しだけ時間がいるかも」
思ったより損傷している部分が多く、拾える情報は限りなく少ないだろうが・・・それでも拾える見込みがあった。
ただ、急いでいる様子の彼は険しい表情を浮かべていて。
急ぎたいのは私も同じだが、下手をすればデータを壊してしまう恐れもあるから。
勿論、それを分かっていての表情だろうけど。
「あ、それと・・・僕FBIの人達に呼ばれてて。今から会いに行くんだけど、如月さんも来て欲しいって」
「私も?」
それは、構わないが。
「・・・・・・」
FBIと聞いて一瞬、今は会いたくない人物の顔が浮かんだ。
だが、そんな事言っている場合ではないし、居るとは決まっていないと、首を横に振って意識を正すように頬を軽く叩いた。
「・・・分かった、博士に声掛けてくるから待ってて」
作業の引き継ぎの為に休んでいた阿笠博士に通達を終えると、コナンくんと一緒にタクシーへ乗り込み、待ち合わせ場所だというファミリーレストランの駐車場へと向かった。
さほど遠くないそこへ着くと、コナンくんは一台の車へと走って向かって行った。
それは、私も見覚えのある車で。
何度か乗った事のある・・・彼女の車かどうか定かではないが、ジョディさんが運転していた車だった。