第70章 巡遭い
「それが嫌なら、昴さんの所に・・・」
「分かった、博士の家に泊まらせてもらう」
彼も中々にズルい。
選択肢を与えられているようで、結局一つしか選べないようになっている。
そんな子だという事は分かっているのに。
「でも、透さんと連絡が取れたら帰るからね?」
「その時は絶対僕にも連絡して」
彼の申し出には、首を縦に動かした。
だが、今日は連絡が無い事はお互いに何となく察していて。
でもそれを私から口にするのは怖かった。
・・・そうなって欲しくない気持ちがあったから。
その後、タクシーを拾い一旦、毛利探偵事務所まで向かう事となった。
「コナンくんはどうするの?」
「今日のこと?」
「それも含めて」
車内の後部座席に並んで座り、スマホを操作する彼に今後の事とまとめて質問をした。
すると彼は何故かどこかへ電話を始めてしまって。
「とりあえず、確認しないといけない事がある」
恐らくコール音が鳴っている最中、そうとだけ告げられると、その通話相手が電話を取ったようで。
「博士、まだ子ども達と一緒か?」
電話の主は阿笠博士、か。
私の前で無防備に、そして博士へ電話をするという事は、その内容は聞いても良いものなんだと判断し、彼のスマホにそっと耳を近付けた。
『ああ、今ポアロでお茶をしとったところじゃ』
ポアロで・・・。
その言葉に一瞬コナンくんと目が合ったが、お互い期待した事への希望は薄い為か、すぐにそれは逸れてしまった。
そこに透さんがいる訳・・・ない。
「んじゃ、聞きたい事と、博士に頼みが」
『なんじゃ?』
「彼女が持ってたスマホの、内部データの修復をしてほしいんだけど」
・・・そういえば、彼女は壊れたスマホを持っていた。
もし彼女が本当に組織の人間なら、そこには組織に関する情報が入っているかもしれない。
そうでなくとも、彼女に繋がる情報が見つかるかもしれない。
それは何より優先すべき行動と言えた。