第70章 巡遭い
あの後、銀髪の彼女は医務室へと運ばれ、話の渡っていた高木刑事達が警察病院へと身柄を保護して行った。
まだ昨日の事故との関連は分からないそうだが、彼女が警察に保護されている方が、少しは安心できた。
結局、その日は私達も楽しむどころでは無くなった為、残念がる子ども達を宥めて一度引き上げる事にした。
「如月さんは、僕と来てくれる?」
「え?・・・あ、うん。分かった」
帰り際、博士の車に乗り込もうとした所をコナンくんに引き止められて。
彼が聞きたい事は、何となく察しが付いた。
「・・・透さんなら、昨日の朝から会ってないし、電話も繋がらないよ」
子ども達と哀ちゃんが博士の車で帰るのを見送ると、横目で彼にそう告げた。
彼からの質問は聞いていないが、この状況で私から得たい情報といえば、それくらいだろうから。
「じゃあ、今日も一人?」
「・・・そう、かもね」
本当は少し心細い。
だから今日は事務所に帰らず、適当なホテルにでも泊まろうかと思っていた。
「博士の家に泊まるのはどう?」
コナンくんがそう提案してくれたが、それに対しては首を横に振って。
「大丈夫だよ、気を使わなくて。それに、哀ちゃんも嫌がるだろうし」
本当は嬉しいし、受けたい気持ちでいっぱいだったが、哀ちゃんも今は不安定な状態だろうから。
そんな時に私なんかが居ると、余計に不安な気持ちにさせてしまったり、気を使わせてしまうかもしれない。
「灰原は気にしなくても・・・」
「ありがとう。でも本当に大丈夫」
・・・笑えてるだろうか。
笑顔のつもりでいたが、私の表情を見た彼の顔が曇っていくのを確認すると、上手くできていないことは察せた。
「・・・じゃあ、僕が如月さん家に泊まっても良い?」
「え・・・っ」
それは・・・良いのだろうか。
勝手に零のテリトリーに誰かを入れるのは・・・例えコナンくんでもいけない気がした。
・・・いや、彼だからいけない気がした。
「・・・ごめん、透さんに許可は貰わないと・・・」
「じゃあ、今日は博士の家に泊まって」
そう再度告げる彼の瞳は真っ直ぐ私を見据えていて。
見た目は幼いそれでも、威圧感はこの上なく大きいものだった。