第70章 巡遭い
「あれ?どうして姉ちゃんが・・・」
「良かった無事で・・・っ」
元太くんの顔に触れながら優しい笑顔を向け、心底安心した様子を見せられると、この短時間で子ども達との距離を限りなく縮めていることが目に見えた。
・・・それが異常だと思える程に。
「大丈夫ですか!?」
騒ぎを聞きつけてか、スタッフの人達が青い顔でこちらに駆け寄ってきて。
「念の為医務室へ・・・!」
そう言って、彼女と元太くんを医務室の方へと案内し始めて。
コナンくん達も着いて行く様子を見せた為、私もその後を追おうとした時だった。
「・・・・・・っ!」
何か、視線を感じた気がする。
それも、一度感じたことのあるようなもので。
決して良いとは言えない気分に、冷や汗が溢れた。
「如月さん?」
「・・・え?あ・・・ごめんなさい・・・」
コナンくんの呼び掛けで我に返って。
小さく辺りを見回すが、騒ぎが気になってかこちらを見る視線は多数ある。
その為、どこからの視線か特定することはできなかった。
・・・気の所為かもしれない。
今はなるべくそう思い込むようにして、元太くん達の手当ての為に医務室へと急いだ。
ーーー
「はい、これで大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
結局、彼女と元太くんの怪我は大したことが無く、落ちる瞬間に元太くんが蹴飛ばしてしまった博士の手当てを中心に行った。
あれだけの事が起きて無事だったのは、偶然だったのだろうか。
それとも・・・彼女が起こした必然だったのだろうか。
「博士も大丈夫みたいですし、観覧車に乗りに行きましょう!」
「お姉さんも行こう!」
あんな事があっても、子ども達は遊ぶ事で頭がいっぱいなのかと心の中で笑うが、ただ一人・・・哀ちゃんはそうでは無かったようで。
「んじゃ、乗りに行くか」
「待って!」
コナンくんの掛け声を聞いて進み掛けていた皆の足はピタリと止まり、視線は一斉に哀ちゃんへと集まった。