第70章 巡遭い
「おーい、コナーン!灰原ー!」
「上ですよ、上ー!」
また、どこからともなく子ども達の声がして。
今日は何かを探してばかりだと思いながら、彼らの言葉通り上へと視線を向けると、観覧車へと続く水平型エスカレーターから身を乗り出している元太くんの姿が目に飛び込んできて。
「元太!!」
「危ない・・・っ!!」
高さ数メートルある場所からのその行為は、自殺行為と言えた。
明らかに危険な場面に、コナンくん達と同じく、思わず元太くんに声を上げた。
・・・その瞬間だった。
「あ?何・・・っうわぁッ!!」
彼の体はあっという間に外へと放り出され、僅かにある建物の壁に捕まっている状態となった。
「・・・ッ!!」
「元太っ!!」
思わず全身に力が入り、言葉も思考も失った。
落ちたらただでは済まない。
でも、どうしたら良いのか分からない。
そんな中、傍にいた銀髪の彼女は、元太くんの捕まる僅かな壁の部分へと乗り移り、彼に声を掛けながら辺りを見回していた。
・・・何を、するつもりなんだろう。
そう思った矢先、最悪の出来事は一瞬にして起こった。
「うわぁぁぁああ!!」
「・・・・・・ッ!!」
元太くんの手は壁から離れ、その体は数メートルの高さから一気に落下を始めた。
思わず目を背けたくなる状況だったが、それを許さない光景に、目を疑った。
「!?」
銀髪の女性は、元太くんの後を追い掛けるように自らその場から落ちると、壁を蹴り、別の斜面のある壁へと飛んでいった。
そこから滑り台のように勢いをつけ、空中で元太くんを受け止めると、壁に沿って転がりながら地上へと戻ってきて。
その動きには一切の無駄が無く、到底素人の動きとは思えなかった。
その上、それをあのハイヒールとスカートで・・・。
「元太くん!大丈夫!?」
ぐったりとする元太くんの体を揺すりながら声を荒らげる銀髪の彼女に駆け寄ると、彼はすぐに気が付いた様子だった。