第70章 巡遭い
「・・・!?」
そのダーツの矢は三本全てど真ん中・・・ダブルブルに突き刺さっていた。
確実に、偶然起きたものでは無い。
・・・元々そういう能力に長けていたのだろうか。
「あっ、そうだ。これをさっきのお友達に渡して貰えるかな?」
お礼を告げてその場を去ろうとした私達にスタッフが差し出したのは、さっき子ども達が持っていた物と形は同じ、でも色の付いていないイルカのキーホルダーだった。
どうやらそれは色を塗る前の試作品らしく、お姉さんの分が足りないのを子ども達が気にしていたのを見て、渡してくれたらしい。
「ありがとう、お兄さん」
改めてお礼を告げてその場を去る瞬間、哀ちゃんは一瞬上の空だったようにも感じた。
それは、何か引っ掛かりを感じているようにも見えて。
「それで、次はどうするの?」
「残りの建設中エリアの聞き込みを終えたら、博士達と合流しよう」
一度保留になっていた質問を再度すると、彼はそう答えた。
それはどうやら、さっきの一件で彼の中で決まった事らしい。
「今のダーツの事もそうだけど、痕跡を探すより彼女と行動を共にした方が、得策だと思う」
確かに、その方が良いかもしれない。
入る情報は僅かだろうが、確実性はある。
・・・早く警察が動いて、何か情報が入ればそれが一番良いのだけれど。
ーーー
その後、彼の言う通りに建設中エリアでも聞き込みをしてみたが、収穫と呼べるものは無かった。
「そろそろ博士に連絡入れてくれねえか?灰原・・・」
予定通り、一度博士と合流する為に観覧車のある場所まで向かっている最中、コナンくんが哀ちゃんへそう指示をするが、彼女は聞いていなかった様子で。
「灰原?」
「あ・・・ごめんなさい」
ダーツの場所から、珍しく彼女はずっとこの調子で。
「大丈夫?何かあった・・・?」
「いえ・・・何でもないわ」
尋ねてみるものの、そう突き返されてしまって。
やはり彼女との間には・・・少し壁がある気がする。