第70章 巡遭い
「こ、コナンくん・・・!?」
そんな事を一人で考えていた矢先、彼は突然銀髪の彼女に向かってスマホのカメラを向けて写真を撮り始めた。
勿論、女性は驚き嫌がって、顔を腕で遮りながらベンチから立ち上がると、どこかへ行ってしまおうとして。
「待ってお姉さん!警察には通報しないよ」
背を向けた彼女に向かってコナンくんがそう声を上げると、彼女は立ち止まり小さく振り返った。
「お姉さんの知り合いを探す為に、写真が必要だったんだ」
「私の・・・知り合い?」
仕草や声色からして、まだ恐怖心や疑心はあっただろうが、体をこちらに向けてくれたことから、話を聞いてくれるだけの姿勢はあると見えて。
「うん。記憶を取り戻す、手伝いをさせてよ」
コナンくんのその言葉に一番喜びの声を上げたのは、何故か子ども達の方だった。
「マジかよ!」
「私達も手伝う!」
「なんたって、僕達は少年探偵団だから!」
嬉々とした声で彼女の周りに群がると、その手を取って。
博士の観覧車はどうするのかと言う問いに、今はそれどころじゃないと返事をされると、博士は落胆して肩を落とした。
「まず、あのイルカさんに聞いてみましょう!」
歩美ちゃんに邪魔だと退かされ、そこを彼女と子ども達が駆け抜けて行った。
彼らの言うイルカというのは、恐らく視線の先にあるイルカの着ぐるみだろう。
やり方や行動力が子どもらしいといえば、らしい。
「コラ、君達!遊び半分でそんなことをしちゃいかん!」
そう荒らげる博士の声など全く届いていないようで。
子ども達・・・ましてや少年探偵団にとっては、食いつかない理由が無いことの出来事だろうから。
「まさか、本当に警察に届けないつもり?」
「んな訳ねえだろ」
哀ちゃんの言葉に工藤新一丸出しで答えると、スマホを操作し始めて。
私はさっき、透さんに相談するかどうか一瞬でも迷ってしまったのに・・・彼は行動すべき最前の策をすぐに見つけ出していた。
それが今できなかった私は・・・。