第70章 巡遭い
「やーべ・・・厄介なのが戻ってきちまった・・・」
面倒だと言わんばかりの声色と表情でそうコナンくんが呟くと、哀ちゃんが後ろで楽しそうに笑みを浮かべた。
この二人の関係性が垣間見えたようで、私も哀ちゃんとは違う笑みを浮かべてしまって。
「あれ、誰ですか?その女の人」
子ども達が彼女に近付くと、無邪気な笑顔を向けては興味津々の眼差しで彼女を見た。
その間に、ようやく追い付いてきた阿笠博士が肩で息をしながら、子ども達の後ろに立って。
「わぁ・・・!お姉さんの目、右と左で色が違う!綺麗・・・!」
「偽物の目、入れてんのか?」
「違いますよ、元太くん。お姉さんはオッドアイだと思いますよ」
コナンくん達が会話をしている時と、子ども達が会話をしている時とでは、やはり根本から感じるものが違う。
無邪気な笑顔で、素直な言葉で会話し、少しズレた事を言っては互いで笑いあって。
言葉通り、子どもらしい。
それを見てか、銀髪の彼女も会ってから初めてクスクスと僅かに声を上げながら笑った。
その表情は柔らかく、優しく、可憐なものだった。
「ところで・・・君達はこんな所で何をしとるんじゃ?」
そう言葉を挟む博士に、これまでの事情を軽く説明して。
「もしかしたら、昨日の事故に関係があるのかも」
そう話すコナンくんに心の中で頷いた。
確かに、その可能性はある。
現場はここから少し離れた所だし。
「じゃったら、すぐ警察に・・・」
「やめて!!」
言いかけた博士の言葉を、血相を変えた彼女が通行人も振り向く程の声を上げながら遮った。
それはあの時の・・・零とコナンくんに初めて会い、ポアロで相談している時の自分を見ているようだった。
「お姉さん、警察に行けない訳でもあるの?」
「・・・分からない」
優しく哀ちゃんが尋ねてみるが、その理由すらも自分では分からないようで。
しかし、この状態ではさすがに私達だけではどうしようもない。
透さんに相談するのは・・・警察に相談する事と同じだろうか。