第70章 巡遭い
「どうして車に乗ってたって分かるの・・・?」
目線を合わせる為、彼らの横に腰を屈めると、そうコナンくんに尋ねた。
「スマートフォンが完全に壊れる程の衝撃を受けてるし、これは車のフロントガラスの破片だ」
スマホをベンチに置き直し、周りに落ちていた破片を指で拾い上げて。
その雰囲気にコナンくんの影は無く、工藤新一そのものになっていた。
「運転中に、頭をぶつけたって・・・こと?」
その彼に再度尋ねると、私に視線を向けながら答えを重ねた。
「その車、割と古い車種だったかも。最近の車はガラスが飛び散らないようにフィルムが挟んであるから」
・・・そんな事まで分かってしまうのか。
彼は推理力や洞察力、観察力もすごいが、相変わらずこの歳にしては知識が豊富過ぎる。
「それに、彼女の体から微かにガソリンの臭いがする」
その言葉に、哀ちゃんと私はその女性に鼻を近付けた。
確かに、僅かだがその臭いはする。
・・・彼は最初、その臭いに反応したと言うのだろうか。
そうだとすれば、尚更恐ろしい。
「お姉さん、他に何か持ってない?」
そう尋ねると、彼女はベンチから立ち上がり自分の服を触って確かめ始めた。
違和感を感じたのか、スカートのポケットに手を入れると、そこから何かを取り出して。
「これは・・・」
「見せてもらっても良いですか・・・?」
持っていた本人も何なのか分からない様子でそれを見つめるところへ、手を差し出した。
彼女は頷いてそれを手渡し、ベンチへと座り直して。
「何なの、それ?」
「単語帳みたいだけど・・・カードに半透明の色が付いてる」
中を開いて見るが、何かが書かれている様子は無く、そこには何色か色の付いたカードだけが束ねられていた。
「おーい!コナーン、灰原ー!如月の姉ちゃん!」
「みんなの分のチケットも買ってきたよー!」
コナンくんや哀ちゃんと一緒にそのカードに気を取られていると、先に行ってしまっていた子ども達が、楽しそうに手を振りながら駆け寄ってくる姿が見えた。