第70章 巡遭い
「あ、コナンくんと如月さん!おはよー!」
「おはよう、歩美ちゃん」
阿笠博士の家に近付くと、待ちきれない様子で子ども達が外で待っていて。
大きく手を振る歩美ちゃんに手を振り返すと、次々に並んでいた子ども達が手を振ってくれた。
ただ、そこにはまだ哀ちゃんの姿は無かった。
「ねえねえ、早く行こうー!」
「そんなに急がなくても、水族館は逃げねえよ」
急かす歩美ちゃんをコナンくんが宥める姿を見れば、やはり馴染んでいるようには見えて。
それは彼の演技力のお陰なんだろうか。
「おー、コナンくん達も来たかの」
声を掛けられた方へ目を向けると、玄関からこちらへ向かってくる阿笠博士の姿が見えた。
「おはようございます、阿笠博士。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼むぞ」
軽く頭を下げながら挨拶を済ませると、車へと案内されて。
今日は博士の車では乗り切れない為、わざわざレンタカーを用意した事をその時知って。
申し訳無いと何度も謝ったが、博士は笑って気にしないでくれと言ってくれた。
失った物は大きかったが、失った故に得たものは同じくらい大きくて、私には持ちきれない事を感じては胸が熱くなった。
「あら、おはよう」
そうこうしている内に、眠そうに欠伸をしながら哀ちゃんが家から出てきて。
彼女は大人の部分を隠すこと無く、姿だけ子どもな事にやっぱり違和感はあって。
・・・そもそも彼女が本当は何歳なのか、知らないけれど。
「おはよう、哀ちゃん」
彼女との間には少し、壁のような物を感じる。
見るからに注意深そうな彼女からすれば、危機感の薄い私は苛立つ対象なのかもしれない。
嫌われていても、仕方が無いとは思った。
「そろそろ出発するかの」
博士の掛け声を合図に、子ども達が一斉に車に乗り込んだ。
助手席を指示された為そこへ乗り込み、程なくして車は今日リニューアルオープンする東都水族館へと発車した。