第69章 井の中
『すぐには分からないが、恐らくスマホの中だ』
どういう事か、と視線で問えば、それに対しても彼はスマホで打ち返してきて。
『機能的な物では無い。物理的に盗聴器の類が埋め込まれている可能性がある』
・・・まさか。
そんな事を、私が眠る横で・・・?
いつ起きるかも分からないのに・・・?
『解体する必要がある。一度、公安に』
そう文章を打っていく彼の手を止めて。
幸い、工具は目の前に一式揃っている。
私がすることは容易だ。
何も言わなくても、彼には私が伝えたい事は全て分かっているようで。
少し目を丸くしていたものの、数秒後にはそのスマホを私に手渡してくれた。
急いで工具を手にして解体を始めるが、こうしてみれば尚更信じられなくなってくる。
確かにこれは少し古い機種で、開けること自体は難しく無いが・・・盗聴器が入っているなら、それはそれなりに知識が無いとできないだろう。
赤井秀一には、そういう知識も備わっているのだと思うと、尚更末恐ろしくなってくる。
「・・・・・・!」
中を開いてみると、そこには明らかに周りと違う部品が埋め込まれていて。
ただ、盗聴器にしてはあまりにも小さい。
これを開発するだけでも難しいだろう。
・・・もしかして、これも彼が。
そう思いながら、ゆっくりとその盗聴器を外していった。
恐らくどこからか電池を吸い取るように作られているのだろう。
だから今も機能的に生きていると言えた。
「・・・壊す?」
限りなく小声で、それが音を拾ってしまわないように手で覆い隠しながら、彼の耳元で囁いた。
小さく一度彼が頷くのを確認した後、本当はこれを解体して見たい気持ちを押し殺しながら、工具で潰して壊した。
「・・・恐らく、発信機の機能もついている」
「さっきのに・・・?」
「多分だが、な」
信じられない。
盗聴器だけならともかく、発信機まで機能としていて、あの小ささは・・・。
実際、その後スマホを解体してみたが、他に取り付けられた形跡は何も無かった。