第68章 蔑んで※
「風見に任せようかとも思ったが・・・期待はできないだろう?」
「そう、かな・・・?」
確かに女性物を選びなれているようには見えないが、変なものは選んできそうに無い。
・・・赤なんて派手な色も選ばないだろう。
「・・・似合わないなんて言って、悪かった」
「え・・・?」
彼も同じことを考えていたのか。
・・・いや、私の顔に出てしまっていて、察してしまったのかもしれない。
「だ、大丈夫だよ。あんな派手な色、私には・・・」
「違う、似合ってはいた。・・・けど」
食い気味で彼自身の言葉を否定をされると、語尾を少し濁して。
「・・・赤は嫌いなんだ。ヤツを思い出すようで」
・・・なるほど。
そういう事だったんだ。
赤井秀一・・・彼の名前にその色が入っているから、か。
「零って・・・そういうとこあるよね」
クスクスと堪えきれない笑いを僅かに漏らしながらそう伝えると、いつの間にか体はベッドに預けられ、視界には再び天井と、零が入っていて。
「どういうとこだ」
ムスッと拗ねたような表情で詰め寄られると、尚更それに子どもっぽさを感じた。
「すぐムキになったり、変なとこ拘ってたり、簡単に嫉妬したり、たまに子どもっぽくなるとこ」
少し挑発的に、余裕を見せながらそう言うと、零が僅かに顔を赤らめたようにも見えた。
あまり見せることのない彼のそういった動作や仕草、表情に、どこか嬉しさのようなものを覚えて。
「・・・そういう口は塞ぐぞ」
「いいよ?」
気持ちだけでも、今は優位に立ってやろうと笑顔で返せば、困ったように彼は片手を額に押し当てて大きくため息を吐いた。
「本当・・・言うようになったな」
独り言のようにも、私に言っているようにも聞こえる物言いで、そう彼が呟いて。
「嫌いになった?」
自分でもそこそこ意地悪な質問だと思う。
それに対して彼は小さく口角を上げて、顔を近付けた。
「なると思うか?」
そこに返事は必要無くて。
互いにそれは分かっているから。
宣告通り、その口は彼によって塞がれた。